重要性が増している北極海航路と日本の津軽海峡

 2021年3月23日、スエズ運河において世界最大級コンテナ船が座礁し運河を完全に塞いだが、29日離礁作業が成功し運河の航行が可能となった。
 この時にロシアのプーチン大統領は北極海航路を利用しろと呼びかけた。確かに北極海航路を利用すると現在利用している航路よりも距離的に短く短期間での運搬が可能となり、ロシアとしても通行料を得ることが出来るのである。
 日本としてのメリットはどうであろうか、南シナ海・東シナ海での島嶼領有権や海域を巡る紛争は大型タンカーの安全航行に大きな影響が出ることは間違いの無い事実である。しかし、尖閣周辺での紛争が発生した場合には、南シナ海の航行も安全とは言えなくなる。北極海航路を利用すれば南シナ海・東シナ海での紛争海域から離れて安全に日本まで運行させることが可能となる。
 もし日本だけではなく、韓国・台湾・中国の主要港に寄港する船舶は北極海航路を利用し千島列島沿いに南下し、津軽海峡を抜けて日本海を航行(逆もあり)することで日本も通航料を受け取る事が可能となる。ここで、問題となるのが日本の政治家・官僚は安全保障と防衛を考慮せず経済的な面でしか考えないという事である。津軽海峡を通過し日本海に入ると言うことは、やはり安全保障の面で問題が無いとは言えない。
 現在、自衛隊は陸海空自ともに南西シフトを採用しており、特に陸自は主要な部隊及び装備品はそちらに配備している。これを南西と東北の両面で実行する必要が出て来る。果たしてこれを実行する意志はあるのかと言うことである。北海道には既に中国人だけではなくロシア人も数多く居住している。そして既にロシアは北海道において影響力を行使しているのである。なぜか、北極海はこれまでロシア弾道ミサイル原潜の聖域であったが、北極海を航路として多数の船舶が航行すると偽装船舶の可能性もあり安全な海域とは言えなくなっているためである。
 そこで戦略原潜がシフトする先はオホーツク海である。千島列島沿いに対空・対艦ミサイル部隊を配備し内海的な聖域とする為である。オホーツク海の東、北、西は直接ロシアが守っているが、南は北海道であり直接ロシア軍を配備出来ないために、ロシアは北海道への影響力を増大させているのである。
 そして最も恩恵を受ける国は中国である。これまで陸のシルクロード(一帯一路)はユーラシア大陸を横断する陸路と、海のシルクロード(一帯一路)は、中東~スリランカ(旧セイロン)~海南島~広州を繋ぐルートの他に、もう一つの海のシルクロードとして北極海航路が出現することになる。中国との貿易を望むヨーロッパとしても有利なルートになるであろう。となれば、津軽海峡を安全に利用するために北海道だけではなくロシアとともに東北北部への影響力を行使しすることになるのは当然である。世界は日本という一国だけの事情に関わらず動き始めているのである。日本も今から対処すべく動く必要がある。
 それでも、完全な独立国として動けないため、アメリカの意向に沿う形で進むのであろう。悲しい限りである。
 

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