アフガンの撤退行動から見えてくる各国インテリジェンス活動の優劣

 2021年8月23日、日本政府は自衛隊をアフガニスタンに派遣し邦人やアフガン人大使館職員の退避を決定したが、27日、自力でカブール空港に到着した邦人1名をパキスタンに輸送しただけである。それ以前の17日、日本政府は現地の日本大使館職員12人をイギリスの軍用機でドバイに退避させている。何故か8月20日になると、アメリカはアフガニスタンにいる民間人の国外退避を支援するため、日本政府に対して自衛隊の派遣をを要請している。
 この全てが後手に回る動きは、日本政府に危機管理の意識と能力が無いためである。
 トランプ前政権は2020年2月にタリバンと米軍の完全撤退を含む和平合意に基づき、アフガニスタンからの最終的な米軍撤退を2021年5月1日から開始して9月11日までに完了すると表明していたはずである。全てはここから始まっているのである。これは2019年9月~2021年7月まで国家安全保障局長をした北村滋の仕事である。彼の上には杉田和博官房副長官が居たが、彼は忙しすぎて国家の安全保障まで手は回らなかったのである。トランプ前政権の発表前に国家安全保障局長として独自に入手すべき情報である。これに基づきアフガンから邦人を退避させる為の具体的なインテリジェンス活動(今回は敢えてこの表現)とその結果に基づく退避計画が作成されなければなかったのである。 国家安全保障局長は単なる警察官僚のためのポストではない。国家安全保障という重責を担うポストである。これが機能しなければ日本には他に変わる組織は無いし、国内情報組織に対して収集すべき情報指示を出せないのである。指示が来なければ国内の情報組織は独自に必要と思われる情報収集活動をする為に国家として一貫した情報活動ではなくなるのである。
 日本政府が自衛隊をアフガニスタンに派遣を決定する際には早かった。アメリカの指示だったからである。アメリカは何を目的に派遣を要請したのか? 調べてみると自衛隊を派遣しても何も出来ないことは分かっていた。自衛隊には失礼な言い方になるが、米軍エリア内で一緒に行動させているだけで見世物の様なものである。
 各国のアフガニスタンからの撤退状況を見るとインテリジェンス活動の優劣が分かるのである。特にイギリスはインテリジェンスに関してはズバ抜けている。民間人、アフガニスタン人の協力者等は準備を万端に整え早めに引き上げさせて、軍には再びアフガニスタンに顔を出させて、未だイギリスの撤退は終わっていないとさりげなくアピールしている。そしてイギリスはインテリジェンス活動に携わった者達を見捨てないのである。アフガニスタン人の協力者は勿論、仮に自国のエージェントがスパイとして敵勢力に捕まったとしても交渉と救出活動を準備して助けるのである。これと真逆の動きをするのが日本政府である。中国でスパイとして捕まった日本人は無視しているし、今回も大使館等で勤務したアフガニスタン人を脱出させていない。この部分を改善しなければ、今後、海外で日本に協力する者は金目当ての人物になって行くであろう。
 ドイツ、フランス等を始めとするヨーロッパ各国も見事である。フランスは5月10日、アフガン人約100人の退避を開始した。すでに米軍の撤退が進み、タリバンの脅威が身近に迫っているとの分析結果である。フランスは8月までに約1300人のアフガニスタン人を脱出させているが、数千人の未脱出者が存在している。
 意外であったのは、韓国の動きである。アフガニスタンの韓国大使館等で勤務していたアフガニスタン人と家族を退避させるため輸送機を派遣し、約400人を韓国インチョン空港に到着させている。つまり、海外でのインテリジェンス活動は日本よりも韓国が上であるということである。
 アフガニスタン人をカブール空港まで移動させるには予定する経路上の部族長とも交渉し、タリバン側に通じる人物とも交渉し、或いは味方として引き込み、タリバンに関する動向についても収集し、同じ経路上で活動する欧米軍との調整、予備経路も確保する等の多岐にわたる活動となるのである。その為に現地でインテリジェンス活動に携わる者達は先の先を見て動いているのである。
 日本の在外勤務の外交官もインテリジェンス活動をしているが、あくまでも外交交渉のための動きであり、諜報活動としてのインテリジェンス活動ではないのである。
 日本人の大部分は、自衛隊を派遣する根拠となる法律等の整備を主張し、紛争地域には第一線部隊で訓練された精鋭部隊を送り込めば救出活動も容易になると信じている人は多いと思うが、その為には先ず活動エリア内の細部情報、その為に情報組織が必要なのである。アメリカ軍は経験上必要と分かった為に、現地で活動する特殊部隊をサポートする情報組織ISA(Intelligence Support Activity)を設立した訳である。
 その他として、テロであるとの難癖を付けて欧米がアフガニスタンとイラクに侵攻した以降にイスラム過激派の活動が活発になった事から、自衛隊はイラク復興支援活動で行った情報収集活動をイラクから引き揚げた以降も現在まで継続すべきであったと思う。情報収集は途絶させると復活させることは不可能に近い事と、当時のイスラム過激派の活動がアフガニスタンまで繋がっている為である。
 国家の安全保障の基礎はインテリジェンス(知性・情報)が全てであると言っても過言ではない。
 
 

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